階段を登るのではなく、円を広げる
キャリアという言葉から思い浮かぶのは、階段かもしれません。プログラマからSEへ、そしてマネージャーへ。登るたびに現場から遠ざかり、いつからかコードを書かなくなる ── 私たちは、その階段を持っていません。
成長とは、責任の円が広がること
一般的な組織では、優れたプログラマほど「昇進」して、管理する側に回ります。プログラマとしての腕を認められた結果、コードを書かなくなっていく。私たちには、それが不自然に見えます。プログラマを一生の仕事にする、と言うのなら、腕を磨いた人ほど、その腕を使い続けられるはずだからです。
私たちの考える成長は、立場が変わることではありません。コードを書く技術を中心に置いたまま、その外側にある設計へ、要件へ、そして「そもそも何をつくるべきか」という問題の本質へと、責任を持てる範囲 ── 円を広げていくことです。
円は入れ子になっています。設計の良し悪しは、コードが書けるから確かめられる。要件の妥当さは、設計ができるから判断できる。何をつくるべきかは、つくれる人が考えるから、絵に描いた餅になりません。外側の円は、内側の円があってはじめて成り立ちます。だから、どれだけ円が大きくなっても、中心のコードを手放すことはありません。
円の先にある仕事
円が大きく広がった人は、いま、こんな仕事をしています。
案件の全体を任される
円が問題の本質まで届いたプログラマは、案件の全体を任されるようになります。お客さまの経営者と並んで事業の課題を聞き、開発のロードマップを描き、ときには組織の課題にまで踏み込んで助言する。いわゆるコンサルタントと呼ばれる領域の仕事です。それでも、肩書は変わりません。自分の手でつくれる人が構想までを担うからこそ、務まる役割だと考えています。
後進を育てる ── 一番外側の円
円は、自分の案件の外にも広がります。一番外側にあるのは、後進を育てるという責任です。私たちには管理職がいないかわりに、親方がいます。親方は、自分もお客さまを担当する現役のプログラマのまま、弟子が育つ環境と機会をつくります。「いいソフトウェアをつくる。」を、いまの自分の仕事だけでなく、未来のつくり手まで含めて引き受ける。それが、この円の一番大きな広がり方です。
何年で、とは約束しません
この円が、いつ、どこまで広がるか。あらかじめお約束することはできません。決まった年数で肩書が変わる、という仕組みも持っていません。目の前のお客さまとソフトウェアに、日々ベストを尽くす。できることが増えたぶんだけ、任される範囲が自然と広がっていく。私たちのキャリアは、その繰り返しでできています。
責任が増えるほど仕事がつまらなくなる、ということはありません。むしろ逆です。できることが増えるほど仕事は面白くなり、自由に働けるようになります。この道に終わりはなく、そのぶん、一生かけて打ち込むだけの奥行きがあります。